⼭形県鶴岡市は、⽇本有数の酒どころとして知られ、ユネスコ無形⽂化遺産に登録された「伝統的酒造り」が今も息づく場所です。7つの酒蔵と3つのワイナリーが、伝統を守りながら、個性豊かな⽇本酒やワインを醸し出しています。この特集では、酒⽶開発の歴史から、鶴岡・庄内の⽇本酒の魅⼒、⽇本酒の選び⽅まで、ご紹介します。

伝統の技と酒⽶が織りなす
鶴岡・庄内の⽇本酒

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⽶開発の歴史と情熱が⽣んだ、鶴岡・庄内の⽇本酒

鶴岡・庄内地方の日本酒は、山形県オリジナル酒米を始めとした酒米と、鳥海山や出羽三山がもたらす「天然の軟水・硬水」、「酒蔵ごとの独自の微生物バランス」が特徴で、日本酒鑑評会では最高位を誇る評価を受けています。
食文化の多様化に伴い、日本酒の味わいも多様化しています。甘口や辛口だけでなく、香りや酸味まで楽しめるようになり、新しい日本酒の魅力が広がっています。

「⻲ノ尾」:伝説の酒⽶の誕⽣

日本酒の酒米といえば「山田錦」が有名ですが、山形県も酒米づくりに深い情熱を持っています。その情熱は、今の日本酒造りにも生き続けています。
昔から庄内地方は日本酒の名産地であり、酒米の品種改良が盛んに行われてきました。特に東北地方特有の厳しい気候や冷害に対応するため、強い稲の開発が求められていました。

1868年、現在の山形県余目町で生まれた阿部亀治は、農民を冷害から救おうと、丈夫な酒米の品種を追い求めました。彼が見つけた「亀ノ尾」は、多くの酒米の基礎となり、酒米づくりに大きな影響を与えました。

⼭形県オリジナル酒⽶「出⽻燦々」「雪⼥神」

阿部亀治の志を受け継ぎ、独自の酒米づくりに力を注いできました。その代表格が、1994年に誕⽣した「出⽻燦々」です。さらに、「出羽の里」や「雪女神」といった酒米が開発され、純米酒、純米吟醸、(純米)大吟醸など、それぞれの酒造りに適した山形県オリジナルの酒米が揃えられています。

鶴岡・庄内の日本酒造り

庄内地方の日本酒造りでは、山形県オリジナルの酒米だけでなく、「山田錦」をはじめとする他地域の酒米も使用されています。それぞれの酒米が持つ特徴を生かし、多彩な味わいの日本酒が生み出されています。

鶴岡の酒蔵

鶴岡には日本酒を醸造する7つの酒蔵があります。市内の飲食店や旅館・ホテルで楽しめるのはもちろん、お土産にもぴったりです。

渡會本店
【代表的な銘柄】
出羽ノ雪・和田来・出羽の里
加藤嘉八郎
酒造
【代表的な銘柄】
大山・十水・ささの舞
冨士酒造
【代表的な銘柄】栄光冨士
古酒屋のひとりよがり・なまいき
羽根田酒造
【代表的な銘柄】
羽前白梅・夢一輪・俵雪
竹の露
【代表的な銘柄】
竹の露・白露垂珠・蔵古流
亀の井酒造
【代表的な銘柄】
亀の井・くどき上手・酒未来
奥羽自慢
【代表的な銘柄】
奥羽自慢・吾有事

伝統的酒造りが盛んな鶴岡。
3つのワイナリーではワインも醸造しています。

  • JA庄内たがわ山ぶどう研究所
  • エルサンワイナリー松ヶ岡
  • ホッカワイナリー

日本酒を選ぼう
ラベルの見方

日本酒選びのヒントは、ラベルにあり

日本酒を選ぶなら、ラベルに注目を。どのように造られているかだけではなく、味わいまで分かるといわれています。ラベルの見方が分かると、お酒選びがもっと楽しくなり、好みの1本を見つけられますよ。

ラベル正面
正面ラベルは“お酒の顔”。メーカーや銘柄によってデザインは様々で、その蔵独自のこだわりを感じます。
ラベル裏面
何を使って、どこで、どんな風に造られたのかが分かります。ここが分かると好みの日本酒選びができるようになります。
特定名称 精米歩合などで分類された名称。「純米大吟醸」「吟醸」など
容量 一升瓶は1.8ℓ、四合瓶は720㎖
原材料名 使用料の多い順番に記載
原料米 原料となるお米について表記。使用料が50%を超えていれば表示可能
精米歩合 玄米から表層部を削って残ったお米の割合。特定名称を表示する場合は併記する
アルコール度数 清酒は22度未満のもの
日本酒度、酸度 甘さや辛さなど、味の目安として記載

日本酒の味の違いはココにあった!
日本酒度・酸度・種類・酵母

日本酒には「日本酒度」や「酸度」といった指標があり、これらを知ることで、味わいの特徴をより深く理解できます。また、日本酒の種類や使用する酵母によっても、香りや味の個性が大きく変わります。

日本酒度
日本酒度とは「甘い」「辛い」を知るための目安となる数値です。水の比重をゼロとしたとき酒の比重はどれだけあるか、酒に日本酒度計を浮かべて測ります。目盛りの0を基点に、浮き上がれば比重が大きく甘口傾向に、反対に沈めば比重が小さく辛口傾向になります。
酸度
酸度とは、酒の味に酸味や旨味をもたらす有機酸(乳酸、コハク酸、リンゴ酸など)の量を相対的に表す数値です。酸度が高ければ甘味が消されるためドライで辛口に、低ければ甘くライトな味に感じます。
ただ日本酒度とのバランスによって味わいが微妙に異なり、それも日本酒の面白さと奥深さに。数字は目安ですが、酸度1.5以上が濃醇タイプ、1.5以下が淡麗タイプになります。
日本酒の種類
日本酒にはさまざまな種類があり、精米歩合や製法によって味わいや香りが大きく変わります。繊細で華やかな香りの「純米大吟醸」から、米の旨味をしっかり感じられる「純米酒」、そしてスッキリとした飲み口の「本醸造酒」まで、どれを選ぶかで楽しみ方も変わります。
酵母
酵母は日本酒造りに欠かせない存在。アルコールを生み出すだけでなく、リンゴやメロンのような甘い香りとバナナや洋梨のように爽やかな香り、大きく分けて2種類の香りをつくり出しています。

成分の量にくわえ、温度によって香りや風味の感じ方が変わるので、好みに合わせて飲むときの温度も変えるのもオススメ。ラベルには使用されている酵母が書かれていることがあるので、注目してみてください。

参照元:「ゼロから分かる!図解日本酒入門」山本洋子著 世界文化社 他

お酒と味わう「ごっつぉ」

日本酒に欠かせないのが美味しいおつまみ。地元で愛される鶴岡ならではの「ごっつぉ」と一緒に楽しめば、日本酒の美味しさがさらに引き立ちます!

温海かぶ
温海地区で焼畑栽培される伝統の在来作物。パリパリとした食感と旨味が美味しい。
ハリハリ漬け
食感が人気の冬の定番は、在来野菜の干した「小真木大根」でつくるとさらに美味。
しそ巻き
カリッと揚がった青じそにくるまれた甘辛い味噌はごはんにも日本酒にも相性ピッタリ。
ばんけ味噌
「フキノトウ」のことを鶴岡では「ばんけ」と呼びます。ばんけの苦みと味噌の甘さ絶妙に絡み合い、お酒がすすむ一品。
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