鶴岡の伝統食「笹巻」
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鶴岡市街地
鶴岡で愛されてきた伝統菓子
山形県鶴岡市は、ユネスコ食文化創造都市に認定されているように、食の魅力があふれるまちです。歴史や文化に根ざした伝統的な食べ物が多く、その一つが230年以上の歴史があるといわれる「笹巻」です。
笹巻は、もち米を笹の葉に包んで煮て作る菓子で、5月5日の端午の節句の行事食として親しまれてきました。全国的には「ちまき」が一般的ですが、鶴岡では笹巻を食べてお祝いするのが伝統です。現在では端午の節句だけでなく1年を通じておやつとしても親しまれています。
庄内地方に伝わる笹巻は、地域ごとに作り方が異なります。鶴岡市がある南庄内では、灰汁(あく)を使って作る黄色い笹巻が主流です。一方、酒田市などがある北庄内では、灰汁を使わずに作る白い笹巻が主流です。
自然豊かな鶴岡では、薪が日常の燃料として使われてきたため、木灰が手に入りやすい環境でした。この木灰は灰汁(あく)とも呼ばれ、強いアルカリ性で殺菌効果や防腐作用があります。この灰汁を水に浸して上澄みをすくった液体を灰汁水(あくみず)と言い、笹巻の保存性を高める重要な役割を果たし、「笹巻の良し悪しは灰汁次第」と言われるほどです。鶴岡では端午の節句の頃に、灰汁水が産直施設でも販売されています。鶴岡の伝統菓子「とちもち」も、とちのアク抜きに灰汁を利用しています。笹巻ととちもちは、鶴岡の灰汁文化の代表的な食べ物です。
「笹巻」「とちもち」について詳細はこちら(外部リンク) | https://www.creative-tsuruoka.jp/project/story/tsuruokadentougashi01.html |
笹巻のつくり方
もち米の準備:もち米を灰汁水に一晩漬けます。
笹で包む: 水気を切ったもち米を笹の葉で包み、「すげ」や「いぐさ」でしっかり巻きます。
煮る: 鍋に笹巻を入れ、水で茹でます。
冷やす:茹で上がった笹巻を冷水にとり、何回か水を変えながら粗熱を取ります。
巻き方は地域や家庭で異なり、三角おむすび型の「三角巻」、握りこぶしのような四面体の「こぶし巻」、角のように尖った「つの巻」などがあり、各地域や家庭で異なります。お祝いの際は、何十枚もの葉を巻く「たけのこ巻」の大きな笹巻も作られます。
もち米を包む笹の葉は、昔から「土用のものがよい」とされてきました。そのため、夏の盛りである7月後半から8月初旬に1年分の笹の葉をまとめて収穫します。かつては笹の葉を乾燥保存していましたが、鮮やかな緑色を保たせるため、重曹などで茹でた後に冷凍保存する方法も用いられています。鶴岡では、端午の節句の頃を中心に、笹の葉を産直施設でも購入することができます。
笹巻を食べてみよう
笹の葉をほどくと、鮮やかな黄色でゼリー状の笹巻が現れます。黒蜜ときな粉をかけていただくのが一般的で、鶴岡では特に青大豆から作られる「青きな粉」を使うことが多いです。青きな粉は、明るいウグイス色をしており、笹巻の風味をさらに引き立てます。
行事食として受け継がれてきた笹巻は、今では地元の懐かしい味として親しまれています。この伝統を継承するために、地元では笹巻づくりの講習会も積極的に行われています。
笹巻は、鶴岡市内のスーパーマーケットや専門店で購入可能です。地域を訪れた際には、お土産としてもおすすめです。ぜひ一度味わってみてください。
伝統を次世代につなぐ
笹巻は、長い歴史と地域に根ざした文化が評価され、2023年3月に文化庁認定の「100年フード」に認定されました。さらに、2024年3月には「庄内の笹巻製造技術」として国登録無形民俗文化財に登録されました。これらの認定は、笹巻が単に歴史のある菓子としてだけでなく、地域で世代を超えて受け継がれてきた食文化としての価値が広く認められたことを示しています。笹巻を通じて、鶴岡や庄内地方の風土や人々の暮らしの知恵が現代にも伝えられています。
これからも、笹巻は鶴岡や庄内地方の食文化を象徴する存在として、地域の人々の誇りを支え続けるでしょう。伝統を守りながら、次世代に伝えていく努力が、さらにその価値を高めていくことが期待されています。
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